チーズケーキの店ガトーしらはま

砂糖不使用チーズケーキの開発|甘味料を考えています。

砂糖不使用チーズケーキの開発

先日もお伝えした通り、当店では糖質オフのチーズケーキの開発を進めております。
糖質オフおよびグルテンフリーのチーズケーキを作るのは、誰もが安心して食べられる美味しいスイーツを提供したいという想いがあるからです。

糖尿病やグルテン不耐症など病気や体質のせいで糖質やグルテンを避けなければいけない方、またダイエットやアンチエイジングを目的としてこれらを避けている方。

各々の理由は様々だと思いますが、糖質やグルテンを避けなければならない人(避けたい人)は実際にたくさんいます。
それらの方々が安心して食べられるスイーツを提供していくこともまた、私たちスイーツを作る者の使命かなと思っております。

ご存知の通り、通常のケーキ作りには大きく分けて二つの糖質が必要です。

一つ目は甘味のための「砂糖」としての糖質、二つ目は生地に使われる「小麦粉」としての糖質で、小麦粉にはさらにグルテンも含まれます。
美味しい糖質オフのチーズケーキを作るためには、これら二つを置き換える必要があります。

小麦粉の話題は次回以降に譲るとして、今回は甘味のための糖質「甘味料」について、ガトーしらはまの考え方をお伝えできればと思います。

なぜ砂糖を避ける必要があるの?

砂糖と言うのは、主成分がショ糖で構成される甘味料で、グラニュー糖や三温糖・氷砂糖など色々な種類があります。
液糖および黒砂糖を除くほとんどの砂糖は、その95~99%以上がショ糖で構成されています。
ショ糖はブドウ糖と果糖が結合したもので、食事や飲料から摂取することで血糖値を急激に上昇させます。

スイーツが糖尿病・ダイエット中・アンチエイジングの敵となる主な理由が、この血糖値の急激な上昇です。

糖尿病の方にとって血糖値の急激な上昇は、命にも関わりかねない重大な問題です。
またエネルギーとして利用されず余ってしまった血液中の糖は、インスリンの働きによって脂肪として蓄積されるため、ダイエットの敵となります。
他にも高血糖は体内のタンパク質を糖化させ、AGEsという老化物質に変え、老化や健康阻害の原因となり、アンチエイジングを妨げます。

このように昨今では病気・肥満・老化などには、砂糖がもつ血糖を急激に上げる作用が深く関係していると示されるようになってきています。

一方で甘味料としては、その自然な甘味が万人に愛されているのも事実です。

よって、誰もが安心して食べられる美味しいスイーツにするためには次の3つが大切になります。

  1. 血糖を上昇させない
  2. その他の健康リスクがない
  3. 砂糖の美味しさを再現

砂糖以外の甘味料について

さて、甘味料選定のために、砂糖以外にどのような甘味料が存在するのか確認してみます。

甘味料には糖質系甘味料(低甘味度甘味料)と非糖質系甘味料(高甘味度甘味料)があり、さらに糖類・糖アルコール・天然甘味料・人工甘味料とカテゴリが分けられます。

糖質系甘味料(低甘味度甘味料)
糖類 糖として代謝されるので血糖値を上げる
糖アルコール 大部分が代謝されずほとんど血糖値を上げない
非糖質系甘味料(高甘味度甘味料)
天然甘味料 天然に存在する糖類以外で甘味をもつ
人工甘味料 人工的に合成された天然には存在しない

このうち糖類はいずれも血糖を上げてしまうので、糖質オフスイーツ用の甘味料としては採用できませんので、この先は他の甘味料について検討してみたいとおみます。

糖アルコール

糖アルコールは糖質系甘味料ではありますが、血糖値にあまり大きな影響を与えません。イチゴやメロン、リンゴや海藻など天然にも存在する甘味料で、砂糖よりも甘味が弱いのが一般的です。
一般的にはトウモロコシやイモのでんぷんから作られることが多く、原料となる糖の種類や製法によって出来上がる糖アルコールが異なります。

糖アルコール:キシリトール・ソルビトール・マンニトール・エリスリトール等

安全性はきわめて高いとされていますが、砂糖よりも甘味が弱いので使用量が増えやすい上に、小腸で吸収されにくい性質であるため摂取しすぎるとお腹が緩くなるという点に注意が必要です。
また難吸収性で吸収されにくいものの、摂取したうちの一部は代謝されて血糖に作用します。

しかしエリスリトールだけは小腸で吸収された上で代謝されずに尿として体外に排出されるため、お腹が緩くなりにくく、さらに血糖にも作用しません。
最近の糖質オフ食品にエリスリトールがよく使われるのはこれらの理由があったのですね。

非糖質系の天然甘味料

非糖質系の天然甘味料は自然に存在するものから抽出される甘味料で、砂糖の数百倍の甘さを持つものもあります。

天然甘味料:甘草(カンゾウ)・羅漢果(ラカンカ)・ステビア等

天然甘味料については危険性というよりも”副作用”と言う方がピッタリくるかもしれません。
天然甘味料の中には生薬として漢方にも使われているものもあり、それらには甘味だけでなく薬理作用があります。薬として使われることもあるような強い作用が示唆されるものを、誰彼構わず食べさせて良いものでしょうか。体質や体調によっては副作用があることも懸念されます。

そもそもスイーツで不健康になりたくない人はいても、健康になりたくてスイーツを食べる人はあまり聞きませんよね。
だから強い薬効の示唆されるものは避けたいと思っています。また逆に薬効に関する情報が少ないものも不安が残るので避けることとします。

個別に見てみると、甘草(カンゾウ)はその主成分であるグリチルリチンによって「偽アルドステロン症」を引き起こすことが報告されています。
羅漢果(ラカンカ)は危険性に関する情報があまり見当たらないことや、産地が中国だけという部分で不安があります。
ステビアについては過去に様々な嫌疑がかけられたことがありましたが、これは迷信やロビー活動か重なって広がったものと言われており、現在では様々な安全性試験を経て安全性が立証されています。
但し、キク科の植物に対してアレルギーのある方は注意する必要があるようです。

参考)『ステビア甘味料の安全性』資料PDF版閲覧,ステビア工業会[2018-07-20閲覧]

2008年にはJECFA (FAO/WHO食品添加物専門家会議)でステビオール配糖体に対して一日許容摂取量(以下ADI)が設定されて、同年アメリカで高純度レバウディオサイドA製品がGRAS(FDAが食品添加物に与える安全基準合格証)に加えられて安全性へのお墨付きを得ると、各国で食品添加物としての使用許可が続きました。
一日許容摂取量(ADI)とは生涯にわたり毎日摂取し続けても影響が出ないと考えられる一日あたりの量のことです。

非糖質系の人工甘味料

非糖質系の人工甘味料は非常に強い甘味が特徴で、自然には存在せず、人間の手で合成されることから合成甘味料とも呼ばれます。
砂糖の数千倍から数万倍の甘さを持つものもあります。

人工甘味料:アスパルテーム・ネオテーム・アセスルファムK等

人工甘味料については、広く使われていたチクロやサッカリンに発がん性などの疑いが指摘されたのち、日本では使用が制限された過去があります。
今も使用されているアスパルテームやアセスルファムKなどの人工甘味料については安全性に対する議論が今も尚盛んです。議論が盛んと言うことは「安全だ!」「危険だ!」と言う双方の意見が聞こえてくるということです。
私たちは化学者ではありませんので、実際に危険であるかはわかりませんが、安心して食べられるスイーツを作ることが目的である以上、安全性について激しく議論されている甘味料を使うというのは気が咎めます。よって、人工甘味料については食味の検討を経ず不使用にすることとしました。
食品添加物として許可が下りているものはADIを守れば安全と判断して差し支えないのですが、やはり不安を感じる方もいると思いますので、、、、

甘味料の候補をブレンドする

ここまでの検討の結果、糖アルコールのエリスリトールと、天然甘味料のステビアを採用しようと思います。

ただ糖類外の甘味料の場合、低甘味度のまたは高甘味度の甘味料が単体で使われることはあまりなく、それぞれの長所を生かしながらブレンドして使わることが多いので、今回の組み合わせはとても相性が良さそうです。

さらに調べてみると、甘味が発現し引いていくスピードもバランスが良いようです。
またエリスリトール単体で砂糖と同等の甘さを出すには1.4倍程の量が必要ですが、ステビア抽出液(レバウディオサイドAの場合)は砂糖の約450倍の甘さを持つため、エリスリトール100gに対しステビアを0.28g程度添加することで砂糖と同等の甘さが実現でき、嵩の問題も解決ができます。
この場合、チーズケーキ1人前で摂取されるステビアの摂取量は約0.14mg程度となりため、例え大食いタレントであってもADIを超えることは難しいと思います。

ステビア自体が高甘味であるが故に、摂取量も非常に低く抑えることができ、ADIを気にする方にも安心してお召し上がりいただけます。
ステビアの正規ADIは現在10mg/kg/日です(体重45kgの場合450㎎が1日の許容量)。エリスリトールはADIを定める必要なしとされています。

糖質オフチーズケーキはまだまだ試作段階ですので、バランスに変動があるかもしれませんが、誰もが安心して食べられる美味しいスイーツを目指して鋭意開発を進めて参ります。

次回は「小麦粉」としての糖質に代わる素材についてお話したいと思います。

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